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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 頁
聖賢の道をそのまま政道に布く賢人でもない。そういう人では間にあわないのである。
乱世だ、乱調子の世だ、これを撓め統べるには、多少自分たちに辛くてもよい、厳格峻烈に臨まれてもいい。――その代りに、
この人なら!
と、信じられる人に拠って安心を求めたいのである。応仁以来ものの十年と落着いたことのない安心をこの土に渇き望んでいるのだった。
智者は口ぐせによくいう。
(――こんな乱調子な時勢に施す政治などというものは実に難しい。誰が出てやっても今ほど政道の難しい時はあるまい)――と。
けれどまた、その反対に、どこかでこういう識者もある。
(いや、それはあべこべだ。――今ほど政治のやりよい時はあるまい。なぜならば、世が平和に倦んでいる時ほど、庶民は勝手な熱や小理窟をならべたり、些細なことをも誹謗したがるものだが、近頃はそうでない。民心は艱難を覚悟し、乱脈から統一に返るのを望みぬいている。何人でも、真実と英邁と明らかな指導をもって、われに従えと呼号すれば、それが国家の大道と知る以上、こぞって、その指のさす所へ従いて行きたがっている。多少の異議誹謗はあっても、大義大道のためと、虫をころして服従一致を望んでいるものを――何で今の時代を難しい時勢というのか。