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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 頁
建設の音
「切に、お免しのほどを」
京都警護の兵だけを残して、その月の二十八日には、信長はもう帰国の途についていた。――まるで日帰りの狩猟から帰る人のような身軽さに、都の人々は呆れていた。
建設の音
――突然、京都の町なかで、喊声が起った。
春も明けたばかりの正月四日の真昼だった。何の心構えもない市民の耳に、
「戦争だッ」
と、いう声のみが聞えた。どこでどんなふうに戦争が始まっているのか、狼狽する市民の影ばかりで、武者らしい者も見えないのに、
「たいへんだッ」
「逃げろ。片づけろ」
町の軒並は、家鳴りをさせて、度を失っていた。
京都の市民ほど戦禍をなめているものはない。国家の治乱興亡の灰燼は、そのまま京都の土であった。国乱のあるたび、京都は兵燹に見舞われた。
こんども。信長の大軍が洛中へはいったせつなは、市民はもう悲痛な観念をしたものだった。木曾の山軍源義仲が、都入りをした折の――破壊的な暴威だの、掠奪だの、婦女子の難などを思い出して、戦慄していたものだった。
ところが、信長は義仲ではなかったのである。市民は甦えった。――そしてこの年暮を平和のうちに送ったのも、信長の徳とし、この正月、婦人が夜道を歩かれるのも、織田軍のお蔭と随喜していた。