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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 頁

青空文庫

「退けッ」

「ひき揚げだッ」

悲壮な敗将の声をつつんで、一瞬に逃げくずれて行った後の大地を見ると、刀の折れ、柄ばかりの長刀、錣のちぎれ、草鞋、燃え残りの旗竿、鼻紙、ふんどしなどまで、散らばっていた。

「木下殿はおいでか。――木下殿はッ? ――」

夕闇の中で呼ばわる者がある。それは突然、本国寺横の小路や附近の横あいから加勢に出た三、四百人の兵の中からであった。

「おうッ」

藤吉郎は、汗の光る顔を振り向けて答えた。

敵が逃げるとすぐ彼は、

「民家の火を消せ。――敵は追わんでもよい、火の手を、町へひろげるな」

と、さしずに狂奔していたので、その顔からも、湯気が立っていた。

「どなたの隊でござる。――ご助勢に駈けつけて下されたのは」

近づいて行くと、

「先頃は」

と、黒縅の鎧に身をかためた一将が、にやにや笑いながら士卒の中から出て来た。

荒木村重であった。

「や。其許か」

「変を聞いて、尼ヶ崎から駈けつけて参った。消火にも手伝いたいし、将軍家のお見舞いもしたいところだが、逃げ足ついた敵を追いこめば、まだいくらでも首が獲れる。おさしずを仰ぎたい」

「かたじけない。頼む」

「では」