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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 頁

青空文庫

「やるな」

と、蜂須賀兵が、追い打ちにし尽した。山野を駈け馴れている野武士の軽捷には、逃げきれるはずもなかった。

一夜を措いて。

不破平四郎はまた、以前に倍した兵力で、洲股を奪取によせかけた。

暁だった。

洲股の洲も河水も、赤くそまった。陽ののぼる頃、城の中では、

「今朝は一しお、朝飯がうまいぞ」

と、凱歌をあげていた。

平四郎は躍起になり、風雨の夜を待って、三度目の総攻撃をもくろんだ。その折は、下流、上流の、美濃方の兵をあげて、

「この一戦に」

と、襲いかかった。

ただ上流では鵜沼城の大沢治郎左衛門の兵だけが、彼の総攻めの計に応じなかった。

洲股川の濁流逆まく闇夜、さしもの城方の野武士勢も、初めて味わったほどな惨鼻な戦争をした。

味方の死傷もかなり出たが、美濃方は、完膚なきまでの惨敗を、その夜、記録してしまった。

それに懲りたか。

永禄五年のその年は、遂に年の暮れるまで二度と、美濃からの襲撃もなかった。

かかる間に、藤吉郎は、なお残りの内部と外装の工事をほとんど完成させて、翌六年の一月早々は、蜂須賀小六を伴って、信長の居城へ報告がてら、年頭の祝賀に帰っていた。