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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 頁
その二人は、彦右衛門から使命をうけて、旅商人に変装し、その日の真夜半、どこへともなく城から出て行った。
いうまでもなく、目的地は、敵国の本拠地――稲葉山の城下にある。
天蔵も又十郎も、そうした使命には元来、打ッてつけの生い立ちである。
間もなく、二人は、使命を果して、ふたたび洲股へ帰って来た。
その間、約一ヵ月。
大河をへだてて、美濃の気はいをながめていると、噂は、そろそろ聞えて来た。
(鵜沼の虎はくさいぞ)
(前から治郎左衛門は、尾張へ内通していたのだ)
(だから、洲股の築城中も、不破平四郎の指揮に服さず、総がかりといっても、兵を動かさなかったのだ)
そういう噂である。
また、こういう風説もとんだ。
(近いうちに、大沢治郎左衛門は、稲葉山城へ呼びつけられ、その責めを問われるもようだ)
(鵜沼の城地も、没収をくうだろう。――稲葉山へ、虎を呼びよせておいてから)
美濃の国中に、それはいかにも真しやかに喧伝された。
――喧伝の火元は、いうまでもなく渡辺天蔵。いや、洲股城に坐っている藤吉郎その者であった。
「もう頃合の時分だろう。彦右衛門、鵜沼へ参ってくれまいか」