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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 頁

青空文庫

朝山日乗は、稀れに見る醜男だった。同じ醜男でも、荒木村重には、どこか愛すべき風骨があるが、日乗は脂くさい入道であった。

――近寄って来て、

「なんじゃ、筑前どの」

と、すぐ事ありげに、声をひそませる。

「何がとは、何が?」

「いま、惟任光秀と、何か、御密談らしかったが……」

「密談。ははは……。こんな所で密談はなるまい」

「けれど、羽柴筑前と惟任光秀が、二条のお廊下で、長々、囁き合っていたというだけでも、人心は脅える」

「まさか」

「いや、まったく」

「御房もすこし御酩酊か」

「だいぶ、いただき過してな。……しかし慎まれたがよいぞ」

「酒をか」

「ばかな。光秀と親しむのは、慎まれたがよかろうと、注意するのだ」

「なぜ」

「あれは余り才識すぎる」

「当世の才識は、朝山日乗なりと、人はみないうている」

「わしは、鈍じゃ」

「なかなか。御房などは隅にも真ん中にも置けない才だ。武人にとって、もっとも苦手なものは、公卿づきあいと、豪商どもの操縦だが、それを得意とする辣腕家は、織田家中において、朝山どのの右に出るものはない。――柴田どのすら恐れ入っている」

「そのかわり、わしには、武功というものは一つもない」