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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 頁

青空文庫

「ここは小橋か大橋か、道にまようた者でおざる」

と、よろめいて来て、妻の背中につかまった。

「ああ酔うた。寧子、負うて行ってくれい。歩けん、歩けん」

横着な良人のてれかくしに、寧子は思わずふき出したが、わざと意地わるく、

「はいはい、負うて進ぜますが、してまた、あなた様のお行き先はどちらですか」

と、訊いた。

すると、秀吉も背中で、くつくつ笑い出して、

「そもじ様まで。そもじ様のお宿まで」

と、子どもみたいに、足を浮かせた。

「ホ、ホ、ホ」

「ホホホホ」

うしろには、大勢の侍女たちが、手燭を持って、この夫婦のさまを見ているのである。

寧子は、重たげに、背をめぐらして、

「のう、みな達、このような酒穢い旅人をひろい帰って、どこへ置いたものであろうぞ」

と、その群れへも戯れた。

侍女たちは、おかしさに、もうお腹をかかえたり、涙をこぼしたりして、いつまでも笑いが止まらなかった。

そして、長浜祭りの花車のように、この拾いものを囲んで、その夜ばかりは、寧子の部屋で、遊び更かした。

稀れにはそんなこともあるが――多くは、朝、難しい良人の顔を見るのが妻の役目のようであった。