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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 頁

青空文庫

ものもいわず、うしろから躍りかかった白刃は、鹿之介の肩を斬りさげて、なお発矢と、切ッ先を岩にぶつけて火を発した。

鹿之介ほどの人物にも、乗じられる隙はあった。骨肉の情には、つい心のすべてを、奪われていたとみえる。

不意にうけた肩先の初太刀は、かなり深く斬り込まれたらしいが、

「あッ。卑怯なッ」

と、身を起すやいな、うしろの者の髻を引ッつかんでいた。

身にうけた刃は一太刀だったが、彼の背後に来ていた殺手は二人だった。天野元明の家人で、ひとりは河村新左衛門、もう一名は福間彦右衛門とよぶ大剛の武士である。

「おのれッ」

と云いざま、鹿之介に髻をつかまれたのは新左衛門のほうだった。

彦右衛門は、それを見て、

「鹿之介、覚悟の時ぞ、上意だッ」

と、喚きながら、太刀をふりかぶって、横へ迫った。

鹿之介は、聞くと、なおさら嚇怒して、

「理不尽ッ」

と眦をあげて叫んだ。

そして、新左衛門の体を、横に振って、彦右衛門の腰へたたきつけた。

彦右衛門はよろめき、新左衛門は大地へ抛り捨てられる――

とたんに、ざんぶと、すぐ前の川から高い飛沫があがった。鹿之介のすがたは、その真っ白な泡沫の中に揉まれていた。