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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 頁

青空文庫

そのほかに深い意味があるように考えたのは、こっちの考え落ちだったと、思い直したのである。

――で、元の席へ帰って来て、

「やめて来た」

と、仔細をはなすと、大賀もかえってほっとしたらしく、

「それはよかった。とかく、大事のまえには事勿れだ。飲み直そう」

と、手をたたいて、京美人の侍女たちを呼びあつめた。ここばかりは、百難克服、挙藩一致の窮乏岡崎の城下ながら、岡崎の外のようだった。豊かなる「物」と貪慾な精神とが、門を閉じて私慾の小国を作っていた。

近藤平六は、物頭の大岡忠右衛門の私宅を訪ねた。

「せっかくでござるが、新規の御加増は、そのまま殿へ返納いたしたく存じますから、御面倒ですが、その手続をお取りねがいたいので」

「何、御加増をお返しする? ……大賀殿のところへ伺ったか」

「行きました。その結果」

「何としたわけだ」

「嫌になりましたから」

「ばかなことをいっては困る。御加増をお断りする手続など例がない」

「なくても、頂戴できません」

「理由を申してみい」

「大賀弥四郎の云い条が気に喰わないので」

「なにも、大賀どのから御加増をいただいたわけではないに」

「――でしょう。