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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 頁
自分のうえに、その五百余の生命がいまこそ託されて行くのだと思うとき――強右衛門は生ける効いを改めて身に覚えた。
「きょうまで、何ひとつ、人にすぐれた功も立てずに来たが……」
この大任を与えられたのは、時あって、巡り会った武士最高の幸! ほまれ! そう思うにつけ五体の肉の緊まるのを禁じ得なかった。
「強右衛門。つつがなく」
「御首尾を祈るぞ」
と、口々に別れを告げる小声がする。ふと振向くと、土塀をうしろに、彼の所属している組の組頭以下、同僚たちのこらず見送りに立ち、あとはただ黙然と眸に情をこめていた。
「…………」
強右衛門も無言。ていねいな一礼を答えて、そのまますたすたと外曲輪の方へ足を早めた。いつもは厳に消燈して真っ黒な本丸の閣にも、ちらと灯影がうごいていた。守将の三九郎貞昌も、侍臣たちも、夜来寝もやらず、ひそかに彼の決死行を見送っているらしく思われた。
強右衛門は、城の片隅にある一叢の木立へかくれ、やがて不浄門へ崖づたいに降りて行った。ここは城中の穢物を流す水門なので、味方にさえ眼につかない所なので、対岸の敵も自然、注意を欠いているし、備えも手薄と見たからである。