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しんぱん ほうろうき

新版 放浪記

林 芙美子

線上閱讀林 芙美子《新版 放浪記(しんぱん ほうろうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 247,330 字 · 497 頁

青空文庫

だが、どこまで行ってもみじめすぎる私達である。秋になると、神経痛で、母は何日も商売を休むし、父は田地を売ってたった四十円の金しか持って来なかった。父はその金で、唐津焼を仕入れると、佐世保へ一人で働きに行ってしまった。

「じき二人は呼ぶけんのう……」

こう云って、父は陽に焼けた厚司一枚で汽車に乗って行った。私は一日も休めないアンパンの行商である。雨が降ると、直方の街中を軒並にアンパンを売って歩いた。

このころの思い出は一生忘れることは出来ないのだ。私には、商売は一寸も苦痛ではなかった。一軒一軒歩いて行くと、五銭、二銭、三銭と云う風に、私のこしらえた財布には金がたまって行く。そして私は、自分がどんなに商売上手であるかを母に賞めてもらうのが楽しみであった。私は二カ月もアンパンを売って母と暮した。或る日、街から帰ると、美しいヒワ色の兵児帯を母が縫っていた。

「どぎゃんしたと?」

私は驚異の眼をみはったものだ。四国のお父つぁんから送って来たのだと母は云っていた。私はなぜか胸が鳴っていた。間もなく、呼びに帰って来た義父と一緒に、私達三人は、直方を引きあげて、折尾行きの汽車に乗った。