輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

しんぱん ほうろうき

新版 放浪記

林 芙美子

線上閱讀林 芙美子《新版 放浪記(しんぱん ほうろうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 247,330 字 · 497 頁

青空文庫

月もまだうすく光っていた。

「暑くてやり切れねえ!」

機関室から上って来たたくましい船員が、朱色の肌を拡げて、海の涼風を呼んでいる。美しい風景である。マドロスのお上さんも悪くはないなと思う。無意識に美しいポーズをつくっているその船員の姿をじっと見ていた。その一ツ一ツのポーズのうちから、苦しかった昔の激情を呼びおこした。美しい夜あけであった。清水港が夢のように近づいて来た。船乗りのお上さんも悪くはない。

午前八時半、味噌汁と御飯と香の物で朝食が終る。お茶を呑んでいると、船員達が甲板を叫びながら走って行った。

「ビスケットが焼けましたから、いらっして下さい!」

上甲板に出ると、焼きたてのビスケットを私は両の袂にいっぱいもらった。お嬢さん達は貧民にでもやるように眺めて笑っている。あの人達は私が女である事を知らないでいるらしい。二日目であるのに、まだ、一言も声をかけてはくれない。この船は、どこの港へも寄らないで、一直線に大阪へ急いで走っているのだから嬉しくて仕方がない。

料理人の人が「おはよう!」と声をかけてくれたので、私は昨夜蚊にせめられて寝られなかった事を話した。