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めいじびじんでん

新編 近代美人伝 (上)

長谷川 時雨

線上閱讀長谷川 時雨《新編 近代美人伝 (上)(めいじびじんでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,076 字 · 256 頁

青空文庫

ずっと前に降った雪が解け残って、裏町の日かげなどに汚なくよごれて凍っているのを、洗いながすように、さほど寒くない雨であった。気温は冬としてはゆるんでいた。わたしは人力車を約束の十一時までに着くように急がせた。

まだ店の窓にはすっかり白い幕が下げてあって、扉の片っぽだけ白い布があげてあった。朝のことゆえ遠慮なく戸口を開けてはいり案内を乞うた。

店の中は――白い布を、扉の半開きだけあげた店の中は、幕開き前とでもいうように混沌としている。睡眠気分三、夜明け気分七――昼間がちらと、差覗いているといった光景であった。わたしは思いがけぬ「カフェーの朝の間」というところを見て、劇場の舞台の準備を眺めているような気持ちで佇んでいた。

昨夜は気がつかなかったが、大方外に立てかけられてあったのであろう。クリスマスデナー開催の立札の、框張りの大きなのが立かけてある。食券三円云々としるしてあった。階段の上り口には赤い紙に白く、「世直し忘年会、有楽座において」とした広告ビラが張ってあった。

鳥打ち帽に縞の着物の、商人の手代らしい人も人待ち顔に立っていた。奥の方から用談のはてたらしい羽織を着た男が出て来て、赤い緒の草履を高下駄に穿き直して出ていった。