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かにのかい

日本の怪談(二)

田中 貢太郎

線上閱讀田中 貢太郎《日本の怪談(二)(かにのかい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 80,664 字 · 171 頁

青空文庫

「好いとも、何も云わずにいるさ」

「それでは、亡者の年齢と亡くなった日を紙に書いて、私がお経をあげて回向して置きますから、お客さんは、明日の朝、寅刻時分に、案内の男をつけてあげますから、山へお登りなさいませ、きっと亡者に逢えますから」

「それで亡者に逢ったら、どうしたら好いだろう」

「案内の男が好い場所を教えてくれますから、其処で待っておりさえすれば、亡者が来ますから、その姿が見えたら、念仏でも唱えるが宜しゅうございます、どんなことがありましても、決して詞をかけてはなりません、詞をかけますと、姿が無くなりますうえに、冥土の障礙となって、亡者が浮ばれないと申しますから」

「好いとも、私にゃ念仏も云えないから、黙って見ていよう」

「それが宜しゅうございます、で、その亡者と云うのは、どうした方でございます」

小八の逢いたいのは先月亡くなった女房であった。新吉原の小格子にいた女郎と深くなって、通っている中にその女郎の年季が明けて自由の体になった。小八は落ちてきた熟柿でも執るように女を己の処へ伴れて来た。小八は下谷長者町の裏長屋に住んでいる消火夫であった。女は背の高い眼の大きな何処かに男好きのする処があった。