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かにのかい
日本の怪談(二)
田中 貢太郎
線上閱讀田中 貢太郎《日本の怪談(二)(かにのかい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 80,664 字 · 171 頁
私は木像をひとわたり見た後に檮の脇立を借りて眼を通した。
「薬師脇立不動之儀、正徳歳中山内監物殿御盗被レ成候所、於二当村一不思議之事出来仕、是ハ不動尊無二御座一故ト申、迎帰、薬師一同奉二修覆一畢」
と云う文句があった。山内監物殿御盗みなされの処に至って私は微笑した。
「なる程、御盗みは奇抜だ」
戸波を去る時、桂月翁は、「いにしえもかかるためしはあると聞くふたたび返せ沖つ白波」と、云う和歌を書いて村の人の一人に与えた。こんなことで盗品が返ってくるなら、警察に和歌係を置いてさしずめ桂月翁を課長にするだろう。
薬師堂を見に往った時のことであった。私に脇立を見せてくれた県会議員は、その帰りに薬師堂の前の稲田に指をやって、
「一度この薬師様が繁昌して、四方から参詣人が集まって来て、このあたりに薬師町が出来て、演戯小屋なども出来たことがありました」
と、云って丘の懐になった処に生えている孟宗竹の藪を指さして、
「あすこが、演戯小屋でありました」と教え、それから詞を続けて、薬師町の歴史を話してくれた。その話によると、明治のずっと初めの比、四国を巡礼している足の悪い遍路が、車を杖で運んでその薬師まで来たが、薬師の霊験のあることを聞いて、そこへ車を停めて祈願を込めていると、数日の後に不思議に足が立ったので、躄車を置いたまま帰っ