輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

うつりが

日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江

近松 秋江

線上閱讀近松 秋江《日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江(うつりが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 152,306 字 · 300 頁

青空文庫

「お待ちどおさま。さあ行きましょう」

五

私は、それから母親の先に立ってゆく方へ後から蹤いて行った。もう夜は十二時もとうに過ぎているので、ことに東山の畔のこととて人の足音もふっつりと絶えていたが、蒼白く靄の立ちこめた空には、ちょうど十六、七日ばかりの月が明るく照らして、頭を仰のけて眺めると、そのまわりに暖かそうな月暈が銀を燻したように霞んで見えている。そんなに遅く外を歩いていて少しも寒くなく、何とも言えない好い心地の夜である。私は母親と肩を並べるように懐かしく傍に寄り添いながら、

「おかあはん、ほんとうにお久しぶりでした。こうと、いつお目にかかったきり会いませんでしたか」といって私は過ぎたことを何かと思い浮べてみた。

はじめて女を知った当座、自家はどこ、親たちはどうしている、兄弟はあるのかなどと訊いても、だれでも、人をよく見たうえでなければ容易に実のことをいうものではないが、追い追い親しむにつれて、親は、六十に近い母が今は一人あるきり、兄弟も多勢あったが、みんな子供のうちに死んで、たった一人大きくなるまでは残っていた弟が、それも去年二十歳で亡くなった。