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うつりが
日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江
近松 秋江
線上閱讀近松 秋江《日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江(うつりが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 152,306 字 · 300 頁
私は、つくづく感心しながら、
「これは好いところだ、こんなところにいたのか。いつからここにいたの。まあ、それでもこんなところにいたのならば、私も遠くにいて長い間会わなくっても、及ばずながら心配して上げた効があったというものだ。うう好い箪笥を置いて」私はそういいながらなお立っていると、
「まあ、どうぞここへお坐りやして」と、母子ともどもして言う。
やがて火鉢の脇の蒲団に座を占めて、母親は次の間の自分の長火鉢のところから新しい宇治を煎れてきたり、女は菓子箱から菓子をとってすすめたりしながらしばらく差向いでそこで話していた。
「長いことあんたはんにもお世話かけましたお蔭で私もちょっと楽になったとこどす」
自分でもよく口不調法だといっている彼女は、たらたらしい世辞もいわず、簡単な言葉でそんなことをいっていた。
私はいくらか咎めるような口調で、
「そんならそれと、なぜ、もっと早くここへ来てくれ話をするとでも言ってくれなかったのだ。一カ月前こちらへ来てからばかりじゃない、もう今年の初めごろから、あんなにやいやい喧しいことを言ってよこしたのも、それを知らぬから、いらぬよけいな憎まれ言をいったようなものだった。