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うつりが
日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江
近松 秋江
線上閱讀近松 秋江《日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江(うつりが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 152,306 字 · 300 頁
すると、その日は好いあんばいに階下の家主の老婆が内にいたので、私は玄関の上り框に腰を掛けながら、老婆と久しぶりの挨拶を交わして、しばらく話していた。すると、そこへ女の母親が、寺詣りでもするらしい巾着をさげて入って来た。
「ああ、おかあはんお久しゅう。私、一昨日の晩紀州から帰って来ました。このごろはもうここにいないんですって」
といって、訊くと、母親もそこに腰を掛けながら、もう先月の末からそこの所帯を畳んでしまって、自分は上京の方の親類の家に厄介になっているようなことを言っていた。私は、そこでも、そんな親類の家に厄介になっているよりも、何とかして私が自分で適当な家を一軒借りて京都に住みたいから、そしたら、おかあはんに、そこへ来てもらいたいというような意向を洩らすと、家主の老婆も傍から、
「そうおしやしたら、ほんよろしいがな」といって、口を添えていたが、母親はいつも愛想よくにこにことはしていたが、
「そのこともあの娘がどない言いますか、あの娘の腹一つにきまることどすさかい」といって、いつものとおりに何もかも自分では要領を得た返事をしなかった。
それでも私は、一昨日雨模様の欝陶しい晩方にこの街にかえって来て、ここの路次を覗いて見た時とちがい、もうここにはいないと思っていた母親に偶然また会ったので、さながら彼女に会った