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うつりが

日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江

近松 秋江

線上閱讀近松 秋江《日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江(うつりが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 152,306 字 · 300 頁

青空文庫

二、三十分も経ったけれど、まだお宮は降りて来ぬ。

どうしているのだろう。二階から屋根うらへでも出て二人で逃げたのだろうか。そうだったら後で柳沢の顔を見る時が面白い、それとも上っていって見ようか、いやそいつはよくない。そう思って根よく待っていると、お宮は笑顔を作りつつ降りて来た。

「じゃ手紙をお返ししますから私の家に来て下さいって。自家の主婦さんが」

「自家の主婦さんて、お前んとこの主婦さんに何も用はない」

そういいつつ私は一軒置いた先のお宮の家に入って行った。

長火鉢の向うに坐っていた主婦はものものしい顔にわざとらしい微笑を浮べて、

「一体どうしたんです?」と呆れた風の顔をして私の顔を見上げた。

座には主婦のほかに女中のお清、お宮と同じ仲間のお菊、お芳、おしげなどが方々に坐っていて、入っていった私の顔をじろじろと黙って見守っている。

「なに、どうもしやあしないさ。私もうお宮さんのところに来ないから、私からよこしている手紙をもらって行こうと思って」

「つまらない。どうしてそんなことをするんです?……若い人たちのすることは私にはわからない」

「そんなことはどうでもいいんだ。