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あねがわのかっせん

日本合戦譚

菊池 寛

線上閱讀菊池 寛《日本合戦譚(あねがわのかっせん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 154,771 字 · 313 頁

青空文庫

と云って割込んで仕舞った。職信年十七の若武者で秘かに従士七八人と共に、城の柵を越えて入った。見覚えのある上に赤の布に白い餅の指物が、城を乗り越えて行くのを見て、流石の職充も驚いた。直ちに白に赤い丸二つの指物がその後を追う事になる。

一番驚いたのは鍋島勢である。信綱の命を伝うべき軍目付親子が敵城へ乗入れたのだから、今はとかくの場合ではないと、軍勢一同に動いて、鍋島勝茂の上白下黒筋違いの旗も、さっと前へ進んだ。鍋島勢が信綱の命に反して先駆したのではなくて、軍目付自ら軍律に反した始末なのである。

この職充は平常士を好んで、嘗つて加藤清正、福島正則等、国を除かれ家を断たれた時、その浪士数十人を引取った程である。この時の戦いにこの浪士達が日頃の恩顧を報じて功を立てて居る。

水野勝成は、鍋島先登の事を聞くや、五千の軍を整えて、子勝俊の来るのを待った。

勝俊白馬に乗り、金の旗掲げて来ると、五千の兵勇躍して進んだ。

勝俊は馬上に叱咤して、

「鍋島勢を排して進め」と命じた。

城外の地勢険阻な処に来ると、馬を棄てて子の伊織十四歳になるのを伴って進んだ。激戦なので、掲げる金の旗印が悉く折れ破れた。