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にほんふどうき

日本婦道記

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《日本婦道記(にほんふどうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 15,091 字 · 30 頁

青空文庫

という名所があるのを思いだした。かねていちど尋ねたいと思っていたし、さいわい用務が早く済んで帰城にもゆとりがあった、それで供の者をそこから先に帰らせ、独りになってそちらへ見にまわった。

海道を東のほうへはいり、むかし鎌倉道だったと伝えられる草がくれの細径を辿ってゆくと、牛田村という処の松原はずれに苔むした標しの石が立っていた。その道しるべに従って左へ折れ、穂立ちはじめた芒の丘を越えると、熟れた稲田のかなたに遇妻川の流れがみえた。……そこを八はしといひけるは、水ゆく川のくもでなれば、はしを八つわたせるによりてなんやつはしといひける、そのさはのほとりの木かげにおりゐてかれいくひけり云ぬんという伊勢物語の一節なども思いだされ、平之丞の心は懐古のおもいに満たされるようだった。むかし杜若のあった跡だという、丘ふところの小さな池をめぐり、業平塚なども見てやや疲れた彼は、すぐ近くにひと棟の侘びた住居のあるのをみつけ、暫く休ませてもらおうと思ってその門をおとずれた。柴垣の内に老松がみごとに枝を張り、さして広からぬ庭はいちめんに萩すすきが生い茂っていた。そのさはのほとりの木かげにおりゐて、かれいくひけりという文章を今の自分にひきくらべながら、折戸を明けて庭へはいると、縁先に人がいてこちらへふり返った、切下げ髪にした中年の