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にほんふどうき

日本婦道記

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《日本婦道記(にほんふどうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 15,091 字 · 30 頁

青空文庫

七

婦人であった。

「八橋の跡を見にまいった者だが、卒爾ながら暫く休ませて頂けまいか」

そうたのむと、婦人はしとやかに立って、

「どうぞお掛けあそばせ」とすぐにそこへ座を設けた、

「とりちらして失礼ではございますがどうぞご遠慮なく……」

平之丞ははいってゆきながら、婦人の姿にどこやら見おぼえがあるように思い、縁さきまで来るとはっとして立ちどまった。そしてわれ知らず昂ぶったこえで、

「お石どのではないか」と叫んだ。婦人は眼をみはってこちらを見たが、

「ああ」

とおののくような声をあげ、まるで崩れるようにそこへ膝をついた。

七

昏れかかる日の残照が、明り障子にものかなしげな光を投げている。別れてからもう二十五年あまりの月日が、いま平之丞とお石とのあいだに繰りひろげられ、初老にはいった者の淡々とした話しごえがもう一刻ほども続いていた。

「ここへ来て二十年とすると、京にはながくいなかったのですね」

「はい……」

「ここへはどういうゆかりで住みついたのですか」

「榁先生のおせわでございました」

「そしてそれ以来ずっと独り身で、琴の師匠をして来たのですね」

「いいえ琴はいちども」

そう云ってお石は頬笑んだ、