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にほんばしふきん

日本橋附近

田山 花袋

線上閱讀田山 花袋《日本橋附近(にほんばしふきん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 18,383 字 · 37 頁

青空文庫

ことに、その日は冬の霧のどんよりとした空にどこからともなく薄日がさし添って来ているような日で、午前十時過ぎの静けさが統一しないバラックの屋根やら物干やら不恰好なヴェランダやらを一面におおい包んでいた。物干の上には後向になった女の赤い帯などが見えていた。

それにしても魚河岸の移転がどんなにこのあたりを荒凉たるものにしてしまったろう。それは或はその荒凉という二字は、今でも賑かであるそのあたりを形容するのに余り相応しくないというのもあるかも知れないが、しかもそこにはもはやその昔の空気が巴渦を巻いていないことだけは確かであった。どこにあの昔の活発さがあるだろう。またどこにあの勇ましさがあるだろう。それは食物店の屋台はある。昔のままの橋寄りの大きな店はある。やっぱり同じように海産物が並べられ、走りの野菜が並べられている。屋台の鮨を客が寄って行って食っている。しかし今ではそれを食ったり買ったりするものが半分以上変って行ってしまっているではないか。江戸の真中の人達というよりも、山の手の旦那や細君が主なる得意客になっているではないか。従って盛り沢山な、奇麗な単に人の目を引くだけのものの様な折詰の料理がだらしなくそこに並べられてあったりするではないか。