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きゅうぶんにほんばし
旧聞日本橋
長谷川 時雨
線上閱讀長谷川 時雨《旧聞日本橋(きゅうぶんにほんばし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 158,045 字 · 322 頁
それを助けるためにお供の連中は遠州御前崎に塩田をつくれとなった。
あたしの母は十二になって、屈強な体力をもっていた。姉と妹二人はどうにもならなかった。彼女は小船を漕いだ。彼女が今でも一番恋しい景色は遠州御前崎の今切れの渡しのところと味方が原だという。彼女は早抹、父親をはげまして自ら小船を漕いで塩浜へとゆく。十二の彼女の海水の撒きぶりには及ぶものがなかったほど、終日を働きくらした。
と姉娘に縁談が起った。親たちは江戸がえりの娘の美しさゆえに――と思った善人である、先方が旗本で、旗本が口をきいてくれたのだからといった具合で悦んだ。仲人が来た。夏のことで白扇をサラリと開くと懐から贈物の目録書と、水引をかけた封金を出して乗せたが、
「芽出度御受納くださるように。」
と丁重に述べておいて、下げた頭をあげると、動作のゆっくりした湯川氏が手をださぬうちに扇の要をくるりと向けかえて、
「御同様に、此方様からも御贈りでござろうから、諸事節約、緊縮して――」
とかなんとか浜口内閣のようなことを言って、もってきた結納金をまた懐中に入れてしまった。それでも好人物な、他人を疑うことをしない夫婦は、悦びだけを受入れ、悦びの意だけを空っぽで渡した。