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きゅうぶんにほんばし
旧聞日本橋
長谷川 時雨
線上閱讀長谷川 時雨《旧聞日本橋(きゅうぶんにほんばし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 158,045 字 · 322 頁
強情で頑固なところが最進智識をすこしも求めようとしないで、自己流の工夫でコツコツやるのだった。そのうちに年月は十年も十五年も飛び去る。老爺さんの頭はだんだん凸凹が多く深くなって、黴がはえたようにそのくぼみに埃がたまる――
ある時、ヒョックリと現われた湯川氏は、赤い毛布をマントのように着て手拭で咽喉のところに結びつけていた。山籠りから急に自分の家にもゆかず長谷川氏をたずねて来たのである。いそがしい父の小閑を見ては膝をすりあわせるようにして座りこんでいた。いつも鉱山のことになると訥弁が能弁になる――というより、対手がどんなに困ろうが話をひっこませないのだ。父は他人の紛糾事件で家族に飯をたべさせているのだから、煩わしいことをきくので頭が一ぱいであったろうに、例の大木魚の顔がムズと前に出たらダニのように離れない。私は子供ながらハラハラした。父の前からはなるたけ離れているように家族は心懸けている。父も子供にも小言もいわない位に離れているのに――で、私は好奇だからでもなんでもなく、なるだけ大木魚の老爺さんの顔を自分の前にもってくるようにした。一体アンポンタンは家のものから遠ざかってポカンとしてばかりいたのに、木魚の老爺さんとだけ話をするのでよっぽど妙だったかもしれない。