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きゅうぶんにほんばし
旧聞日本橋
長谷川 時雨
線上閱讀長谷川 時雨《旧聞日本橋(きゅうぶんにほんばし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 158,045 字 · 322 頁
他の女中は蒔絵の重箱へ詰めるあれこれの料理にてんてこ舞をするのだった。早くから船は来て(浅草猿若町にあった三座の芝居へは多く屋根船か、駕籠でいったものである)、炬燵を入れ、縮緬の大座布団を、御隠居さんの分、隠居さんの分、御新造さんの分と三枚運ぶ。御隠居さんと御の字のつくのが石川氏の母親のことで、御の字のつかない方のが娘のために引きとられて楽隠居をしていた、湯川老人を捨てたお母さんであった。二人とも向う河岸の、中洲よりの浜町に隠居しているのを誘って乗せてゆくのだった。この女たちも花菊夫人におとらぬ気随な生活であったであろうが、頭の方は坊主だったから芝居行きに泣き喚きはないから無事だが、母屋の内儀の方はそうはゆかない。合せ鏡に気に入らない個所でも後の方に見出すと、すぐ破して結い直しである。それも髪結いさんが帰ったとなると、撫でつけがうまいので髪のことだけは気にいっているお手許使いの姪のおたきがよばれるが、もともと機嫌を損じているのだから泣かされるまで幾度も結い直させられる。そうなると芝居なんぞは何時からでもよいとなる。お風呂ははいり直しである。昨夜から寝ないものもキョトンとしてそのままで手をつかねている。