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きゅうぶんにほんばし

旧聞日本橋

長谷川 時雨

線上閱讀長谷川 時雨《旧聞日本橋(きゅうぶんにほんばし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 158,045 字 · 322 頁

青空文庫

私はよく言われた、お前は、書籍ばかりすきだと、ああいう人になるよと。

小伝馬町の、現今電車の交叉点になっている四辻に、夕方になると桜湯の店が赤い毛布をかけた牀床をだした。麦湯、甘酒、香煎、なんでもある。このごろの芝居ではお盆でだすが、一人だと茶台――真中に穴のあるものでも出した。その廻りには、煎りたて豆だの、赤に紫の葡萄の絵を描いた行燈のぶどうもちだの、飴やが並んだ。金米糖やもあった。金花糖やも人形町に店があって、招き猫は大小となく出来ていた。噛るとガランドウとムクとあった。廻り燈籠や、ほおずきやが夜の色どりで、娘たちが宵暗にくっきりと浮いて匂った。

浴衣と行水が終日の労れを洗濯して、ぶらぶら歩きの目的は活動もなくカフェもない、舞台装置のひながたと、絵でいった芝居見たままの、切組み燈籠が人を寄せた。

横山町や、薬研堀あたりの大店では荒い格子戸の、よく拭き込んだのをたてて、大戸を半分だけおろして、打水をして見せていた。わざと店はあまり明るくはなかった。そして店はキチンと取りかたづけられて、誰も――小僧一人いはしなかった。そういう家の前を離れると、すぐ傍が黒い蔵であったり、木口のよい板塀であったりして、天水桶や、金網をかけた常夜燈が灯っていたように覚えている。