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きゅうぶんにほんばし

旧聞日本橋

長谷川 時雨

線上閱讀長谷川 時雨《旧聞日本橋(きゅうぶんにほんばし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 158,045 字 · 322 頁

青空文庫

」

とおしょさんもいった。両国の店ってなあにと聞くと、

「困ったねえ。」

と母娘して笑った。おしょさんの家の軒燈には山崎としてあるが、両国の並び茶屋の名も「山崎」だったと坊さんのおばあさんがいった。

あんぽんたんの好奇心は拡大られた。並び茶屋を出したおしょさんの若い時分はどんなだろう、盲目のおばあさんの、大名のお部屋さま時代はどんなだろう。そこに、くさ草紙の世界が現われ綿絵の姿が髣髴とした。田之助が動き、秀佳が語る――

「ヘイ、お暑う、伝吉でございます。」

芝居茶屋の若い衆――といっても、もう頭の禿ている伝さんが、今戸のおせんべいを持ってくる。

「いい香いだね。」

おしょさんは袋をあけて見ながらいう、そこのおせんべいは、持ってくる時間をいって、頼んで焼いておいてもらうのだから、ほんとの親切を悦んですぐお茶を入れさせる。

「こんどはひとつどうぞ。」

芝居の話と伝さんの娘の話をして、さんざい袋をもらってかえる。と、入れちがいに、

「へえ、伝さんが来ましたか?」

と女中さんと話ながら清さんが入って来た。伝さんとおなじの、黒い、麻の着物の尻はしょりをおろして、手ぬぐいで、麻裏草履を穿いて来た足前をはたいて、上って来て、キチンとお辞儀をした。