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きゅうぶんにほんばし
旧聞日本橋
長谷川 時雨
線上閱讀長谷川 時雨《旧聞日本橋(きゅうぶんにほんばし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 158,045 字 · 322 頁
「お暑うございますな。」
茶献上の帯の背にはさんだ白扇をとって、煽ぎながら、畳んだ手拭の中をかえして頸を拭いた。小判形の団扇が二本、今戸名物、船佐の佃煮の折が出される。
「川崎屋までまいりましたから、これは私のわざっとお土産で。」
清さんの兄貴は、川崎屋権十郎の古い男衆だった。
こういう人たちは、中村座が閉場ば中村座の何屋へ、新富座ならば何処と、三、四軒の芝居茶屋を助けもするが、歌舞伎の梅林とか三洲屋とか、一、二の茶屋で顔のうれている男衆たちだった。
「毎年是真さんでござんすから、今年は河竹さんのにお頼みいたしまして――」
それは団扇の絵のことだった。河竹さんとは、本所に住む黙阿弥翁のことで、二人娘の妹さんが絵をかき、姉さんはお父さんの脚本のお手伝いをした。
おしょさんの家には、そうした団扇に虫がつかないように、細い磨竹に通して、室の隅に三角に、鴨居へ渡してあった。
「おしょさん、今年のお浴衣は、大層好いっておはなしですから、夜芝居で、お浴衣見物でございますから、ひとつどうぞ、御見物を――」
おしょさんは、今年も船で納涼の催しをと考えていたのをやめて、自慢の、その頃ではめずらしい素鼠地の、藤の揃い浴衣で見物することにきめる。