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きゅうぶんにほんばし
旧聞日本橋
長谷川 時雨
線上閱讀長谷川 時雨《旧聞日本橋(きゅうぶんにほんばし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 158,045 字 · 322 頁
「ものは、思っていたより倍かかるものです。まして、長く残そうと思う土蔵を、金がかかりすぎるからといって、途中で手をぬくようなことがあるといけないから、どうしても二ツ建てるだけの用意をしておかないとちゃんとしたものが出来ますまい。」
それは理由のある理窟だから、祖父は頷いた。けれど、三戸前分なければというのには不服だった。
「それがなぜ、もう一ツ分入るのだ。」
「では、万一、蔵の出来かかった時に天災が来たらどうします。土蔵は出来ましたが、蔵に入れる何にもなくって人手に渡しますとは、まさか言えますまい。」
なるほどと思った祖父はうなった。現今のように金融機関のそなわらない時代のことである。空手で、他人の助力をかりずに働かなければならないものには、それほど手固い用意も必用だったであろうが、その場合の祖母の意見は、もうここまで来たという祖父の気のゆるみを、見通していたものと私は考える。
私という人間は、また、そうした祖母の教訓をうけながら、利にうとく、空手でものごとをはじめる、赤ン坊のような勇気? 時折自ら苦笑する、『女人芸術』にしてからが、この祖母の諭めを服用していたならば、秋風寒しなんて、しなびはしないであろうに――祖母は十九で自己を建設のために遠く出て来た人、私は時代の激しい潮流に押流された江戸人の、残物の、