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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(二)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(二)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 215,865 字 · 432 頁

青空文庫

金兵衛は男盛りの独身者であるが、お藤はもう五十を越えている。まさかにそんな不埒を働く筈はあるまいと、文字春も初めは容易に信用しなかったが、お角はその怪しい形跡をたびたび認めたというのである。土蔵の奥や二階のひと間へ不義者がそっと連れ立ってゆくのを、自分はたしかに見とどけたと彼女は云った。

「併しそんなことがいつまでも知れずには居りますまい」と、お角は溜息をついた。「もし何かの面倒が起りました時に、わたくしが手引きでも致したように思われましては大変でございます」

主人の女房と家来とが密通の手引きをした者は、その時代の法としては死罪である。お角が津の国屋に奉公をしているのを恐れるのも無理はなかった。お角は暇をとれば、それで済むが、済まないのは女房と番頭との問題で、万一それが本当であるとすれば、津の国屋が潰れるような大騒動が出来するに相違ない。死霊の祟りよりもこの祟りの方が覿面に怖く思われて、文字春はまた蒼くなった。

しかし彼女はまだ一途にお角の話を信用することも出来ないので、そんなことを迂濶に口外してはならぬと、くれぐれもお角に口止めをして帰した。

よもやとは思いながら、文字春も幾らかの疑いを懐かないわけには行かなかった。