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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(二)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(二)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 215,865 字 · 432 頁

青空文庫

「あら、お師匠さん。いいところへ……。早く来てください」

「一体どうしたの」と、文字春は胸を躍らせながら訊いた。

「店の長太郎と勇吉が……」

「長どんと勇どんが……。どうかしたんですか」

「出刃庖丁で……」

「まあ、喧嘩でもしたんですか」

暗い中でよく判らないが、お雪はふるえて息をはずませているらしく、もう碌々に返事もしないで、師匠の足もとにべったりと坐ってしまった。

「しっかりおしなさいよ」と、文字春は彼女を抱き起しながら云った。「そうして、その二人はどこにいるんです」

「なんでもそこらに……」

なにしろ暗いので、文字春にはちっとも見当が付かなかった。水明かりでそこらを透かしてみたが、近いところでは二人の人間があらそっている様子も見えなかった。仕方がなしに彼女は声をあげて呼んだ。

「もし、長さん、勇さん……。そこらにいますか。長さん……、勇さん……」

どこからも返事の声はきこえなかった。暗さは暗し、不安はいよいよ募ってくるので、文字春はお雪の手を引いて、明るい灯の見える方角へ一生懸命にかけ出した。

八

半分は夢中で自分の家のまえまで駈けて来て、文字春は初めてほっと息をついた。