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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(二)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(二)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 215,865 字 · 432 頁

青空文庫

おまえ方はおそろしい禍いを避けるために、護摩を焚き、祈祷を行なっていながら、却って仏罰を蒙るようなことを仕出かして、どうする積りか。尊像のあるか無いかは百日を過ぎれば自然に判ることである。それを疑うものは参拝を止めたらよかろうと、彼女はきっぱりと云い切った。

こう云われると一言もないので、誰も彼もみな黙ってしまった。そうして、日々の祈祷は今までの通りに続けられたが、尊像紛失のうたがいはまだ全く消えないで、信者のあいだにはいろいろの噂が伝えられているうちに、いよいよ盂蘭盆の十五日が来た。祈祷はこの日限りでとどこおりなく終った。

あくる十六日の朝になっても、弁天堂の扉はあかなかった。日々の祈祷の疲れで、きょうは善昌さんも朝寝坊をしているのであろうと、近所の者も初めのうちは怪しまなかったが、やがて午ごろになっても扉があかないので、不思議に思って裏口へまわって窺うと、水口の戸には錠がおろしてないとみえて、自由にさらりとあいた。幾たびか声をかけても返事がないので、近所の二、三人が思い切って薄暗い奥へはいると、どこにも善昌のすがたが見えなかった。かれは六畳の小座敷に寝起きしている筈であるが、そこには蚊帳さえも釣ってなかった。