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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(六)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(六)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 196,831 字 · 396 頁

青空文庫

こういう時には、繁昌しねえ家の方が都合がいいのだ」

親分も子分も少しは飲むので、取りあえず酒と肴をあつらえて猪口を取りかわした。

「今度の一件は留の受け持ちで、わっしは中途からの飛び入りだから、詳しいことが腹にはいっていねえんですが……」と、兼松は猪口を下に置いて云い出した。「いったい、佐藤の屋敷に忍んでいるお近という女は何者ですね」

「今はお近といっているそうだが、以前はお亀といって、深川の羽織をしていたんだ」

「むむ。芸者あがりかえ」

「容貌も好し、気前もいいとか云うので、まず相当に売れているうちに、金田という千石取りの旗本の隠居に贔屓にされて、とうとう受け出されて柳島の下屋敷へ乗り込むことになったのだ」と、吉五郎も猪口を置いて説明した。「それでまあ二年ほど無事に暮らしていたのだが、今から足かけ四年前の秋のことだ。十三夜の月見で、夜の更けるまで隠居と仲よく飲んでいた。……それまでは屋敷の者も知っているが、そのあとはどうしたのか判らねえ。夜が明けてみると、隠居は寝床のなかに死んでいた。酔って正体もなしに寝ているところを、剃刀のようなもので喉を突いたらしい。