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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(六)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(六)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 196,831 字 · 396 頁
半七捕物帳
一
「いつも云うことですが、わたくし共の方には陽気なお話や面白いお話は少ない」と、半七老人は笑った。
「なにかお正月らしい話をしろと云われても、サアそれはと行き詰まってしまいます。それでも時時におかしいような話はあります。もちろん寄席の落語を聴くように、頭から仕舞いまでげらげら笑っているようなものはありません。まあ、その話に可笑味があるという程度のものですが、それでもおかしいと云えば確かにおかしい」
いわゆる思い出し笑いと云うのであろう。まだ話し出さない前から、老人は自分ひとりでくすくすと笑い出した。なんだか判らないが、それに釣り込まれて私も笑った。正月はじめの寒い宵で、表には寒詣りの鈴の音がきこえた。この頃は殆ど絶えたようであるが、明治時代には寒詣りがまだ盛んに行なわれて、新聞の号外売りのように鈴を鳴らしながら、夜の町を駈けてゆく者にしばしば出逢うのであった。
その鈴の音を聴きながら、老人はまだ笑っていた。すこし焦れったくなって、わたしの方から催促するように訊いた。
「そこで、そのおかしい話というのは、どんな一件ですか」
「つまり、物が逆さまになったので……」