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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(六)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(六)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 196,831 字 · 396 頁

青空文庫

その前に腰をかけていた男が立ち上がった。

「じゃあ、どうしてもいけねえと云うのかえ」

内の返事はきこえなかったが、男は嚇すように云った。

「じゃあ仕方がねえ、この先き、何事が起こっても俺あ知らねえ。その時になって恨みなさんな」

暖簾をくぐって出る男の前に、半七は立ち塞がった。

「兄い。ちょいと待ってくれ」

「誰だ、おめえは……」と、男は眼を三角にして半七を睨んだ。

「おめえは千次さんじゃあねえか」

「ひとの名を訊く前に、自分の名を云え。それが礼儀だ」

「礼儀咎めをされちゃあ名乗らねえわけにも行かねえ。わっしは三河町の半七だ」

半七と聞いて、男は俄かに顔の色をやわらげた。彼は衣紋を直しながらおとなしく挨拶した。

「やあ、三河町の親分でしたか。お見それ申して、飛んだ失礼をいたしました。わっしは神明の千次でごぜえます」

「そうらしいと思った。まあ、こっちへ来てくれ」

半七は彼を引っ張って、五、六間さきの質屋の土蔵の前へ連れ出した。千次はなんだか落ち着かないような顔をしていたが、それでも素直に付いて来た。

「今聞いていりゃあ、おめえはさつきの帳場で何だか大きな声をしていたじゃあねえか。