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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(四)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(四)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 217,272 字 · 434 頁

青空文庫

「逢いませんでした」

この時、庭口から松吉が大急ぎで帰って来た。八月の秋の日はまだ暑いので、彼は襟もとの汗をふきながら云った。

「親分、お鎌はいませんよ」

「家にいねえのか」

「荒物屋の店は空明きで、何処へ出て行ったのか近所の者も知らねえと云うのです。なにしろ、こっちの方も気になるので、案内の男だけを見張りに残して置いて、わっしは一旦引っ返して来たのですが、どうしましょう」

「どうにも仕方があるめえ」と、半七は舌打ちした。「下司の知恵はあとから出る。こうと知ったら早くあの婆を引き挙げればよかった。そこで、頼んだ物を持って来たか」

「店へはいって探してみたら、毎日の売り揚げを付けて置く小さい帳面がありました。これじゃあ役に立ちませんか」と、松吉はふところから藁半紙の帳面を出してみせた。

「むむ。なんでもいい」

半七はその帳面を受け取って、かの結び文の「十五や御ようじん」と引き合わせると、松吉も縁へ這いあがって覗き込んだ。

「成程、似ているようですね」

「似ているじゃねえ。確かに同筆だ。この寺へはいろいろの奴らが寄り集まって来て、その置手紙を木魚の口へ投げ込んで置いて、なにかの打ち合わせをすることになっているらしい、そこまでは先ず判ったが、さてこの十五夜御用心……。