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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(四)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(四)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 217,272 字 · 434 頁

青空文庫

半七捕物帳

一

「むかし者のお話はとかく前置きが長いので、今の若い方たちには小焦れったいかも知れませんが、話す方の身になると、やはり詳しく説明してかからないと何だか自分の気が済まないというわけですから、何も因果、まあ我慢してお聴きください」

半七老人は例の調子で笑いながら話し出した。それは明治三十一年の十月、秋の雨が昼間からさびしく降りつづいて、かつてこの老人から聴かされた「津の国屋」の怪談が思い出されるような宵のことであった。今夜のような晩には又なにか怪談を聴かしてくれませんかと、私がいつもの通りに無遠慮に強請りはじめると、老人はすこしく首をひねって考えた後に、面白いか面白くないか知りませんけれども、まあ、こんな話はどうでしょうね、とおもむろに口を切った。

その前置きが初めの通りである。

「いや、焦れったいどころじゃあありません。なるたけ詳しく説明を加えていただきたいのです」と、わたしは答えた。「それでないと、まったく私たちにはよく判らないことがありますから」

「お世辞にもそう云ってくだされば、わたくしの方でも話が仕よいというものです。まったく今と昔とは万事が違いますから、そこらの事情を先ず呑み込んで置いて下さらないと、お話が出来ませんよ」