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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(四)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(四)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 217,272 字 · 434 頁

青空文庫

誰に用心しろと云うのかな」

云いかけて、又なにか思い出したように、半七は向き直った。

「おい、元八。おめえはその芭蕉のかげで立ち聴きをしていて、なんにも話し声は聞えなかったか」

「声が低いので、よく聴き取れませんでした。ただ一度、全真という納所坊主がこの縁側から月をながめて、ああいい月だ、諏訪神社の祭礼ももう直ぐだなと云うと、住職の全達が笑いながら、諏訪の祭りが見たければ直ぐ出て行け、十月までには間に合うだろうと云って、みんなが大きい声で笑っていました」

「諏訪の祭り……信州かな」と、松吉は口を出した。

「いや、信州の諏訪は十月じゃあるめえ」と、半七は打ち消した。「十月の祭りならば、長崎の諏訪だろう。九州一の祭りで、たいそう立派だそうだ。そんな話を誰かに聞いたことがあるようだ。むむ、長崎か……長崎か……」

長崎を口のうちで繰り返した後に、半七は証拠の結び文と売揚げ帳をふところへ押し込んだ。

「いつまでここに罠をかけていても、化け猫や狐が安々と掛かって来そうもねえ。ともかくも一旦引き揚げて緑屋へ行くとしよう」

「荒物屋の方はどうしますね」と、松吉は訊いた。

「あの男にばかり任かしちゃあ置かれねえ。