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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(四)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(四)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 217,272 字 · 434 頁

青空文庫

「わたしも半分夢中でよく判らなかったんですが、どうも親方のようでした」と、次八は云った。

「三度目のは藤次郎だね」

「はい。この時にはわたくしが起きていたのでございます」と、お国は答えた。

「藤次郎は外から、おかみさん、おかみさんと呼んだのかえ」

「はい」

「御亭主がいなくなってから、平七と藤次郎は大層親切に世話をしてくれるそうだね」

お国はすこし顔を紅くして黙っていた。

「こんなことを訊くのも何だが」と、半七は笑いながら云い出した。「お前はどっちかの男のところへ再縁する気があるのかえ」

「いえ、まだ三十五日も済みませんのですから、そんなことを考えたこともございません」と、お国は低い声で云った。

「それもそうだが……」と、云いかけて半七も俄かに声を低めた。「おい、あの柳のかげに立っているのは藤次郎じゃあねえか」

お国は伸びあがって表を覗いたが、やがて無言でうなずいた。それと同時に、藤次郎は柳のかげからそっと立ち去ろうとしたので、半七は急に声をかけた。

「やい、藤次郎、待て。熊、早くあの野郎をしょびいて来い、逃がすな」

熊蔵はすぐに店から飛び出して、藤次郎の腕を引っ掴むと、かれは案外におとなしく引き摺られて来た。