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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(四)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(四)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 217,272 字 · 434 頁
目あての桂庵は海保寺の門前にあって、入口にむさし屋という暖簾が懸かっていた。近所で訊くと、おかみさんは三十三の厄年で川崎の初大師へ参詣に行って、その帰り道で暴れ馬に蹴られて、駕籠に乗って帰って来たが、それから熱が出たので今も寝ているという噂であった。お六は鶏に襲われたことを秘して、馬に蹴られたと云っているらしい。鶏というのを憚っているのは、そこに何かの仔細が無ければならないと、半七の疑いはいよいよ深められた。彼は思い切って、むさし屋の暖簾をくぐってはいると、手引きらしい四十前後の女が店さきに腰をかけていた。
「ごめんなさい」と、半七は会釈した。「おかみさんは内ですかえ」
「おかみさんは二階に寝ていますよ」と、女も会釈しながら答えた。「七日ほど前に怪我をしましてね」
「番頭さんは……」
「番頭さん……。勇さんですか」
「ええ、勇さんです」
「勇さんは二、三日留守ですよ」
「どこへ行ったのです」
「さあ、わたしもよく知りませんが、金さんのところへでも行っているのじゃありませんか」
「金さんの家はどこでしたね」
「金さんの家は……。なんでも鮫洲を出はずれて右の方へはいった畑のなかに、古い家が二軒ある。