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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(四)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(四)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 217,272 字 · 434 頁

青空文庫

へのぼる途中でもう汗ばんで来た。羽織をぬいで肩にかけて大木戸まで行き着くと、亀吉は約束通り待っていた。

「すこし天気が好過ぎるな。だが、まあ、降られるより優しだろう」

「そうですよ。きのうのようじゃあどうすることも出来ません」と、亀吉も羽織を袖畳みにしながら云った。

内藤新宿の追分から角筈、淀橋を経て、堀ノ内の妙法寺を横に見ながら、二人は和田へ差しかかると、路ばたの遅い桜もきのうの雷雨に残りなく散っていた。

もう青葉だなどと話しながら、畑道のあいだを縫って大宮八幡の門前へ辿り着くまでに、二人は途中の百姓家で幾たびか道を訊いた。

「初めて来たせいか、ずいぶん遠いな」と、半七は立ちどまって云った。

「ちっとくたびれましたね。まあ、一服しましょう」

二人は路ばたの石に腰をかけて、煙草入れを取り出した。空はいよいようららかに晴れて、そこらの麦畑で雲雀の声もきこえた。風の無い日で、煙草のけむりの真っ直ぐにあがるのを眺めながら、半七はしずかに云い出した。

「なあ、亀。おれは途中で考えながら来たのだが、ここの絵馬は無事だろうと思うぜ」

「そうでしょうか」

「おそらく無事だろうと思う。