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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(四)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(四)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 217,272 字 · 434 頁

青空文庫

これから鈴ヶ森をひと廻りして来ると云い置いて、二人は又そこを出ると、五月なかばの真昼の日は暑かった。

「東海道は砂が立たなくっていいが、風が吹かねえと随分暑いな」と、半七は眩しそうに空をみあげた。

海辺づたいに鈴ヶ森の縄手へ行き着いて、二人はかの睨みの松あたりに、ひと先ず立ちどまった。きょうは海の上もおだやかに光って、水鳥の白い群れが低く飛んでいた。

「ここらだな」

半七はひたいの汗をふきながら其処らを見まわした。松吉も見まわした。二人は又しゃがんで煙草をすいはじめた。やがて半七が煙管をぽんと掃くと、吸い殻の火玉は転げて松のうしろに落ちたので、その火玉を追って二度目の煙草をすい付けようとする時、草のあいだに何物をか見付けた。すぐに拾いあげて透かして視て、半七は忽ち笑い出した。

「今まで誰か気が付きそうなものだが、ここらの人間もうっかりしているぜ。それだから狐に化かされるのだ。おい、松。これを見ろよ」

「なんですね、煙草のような物だが……」と、松吉は覗き込んだ。

「ような物じゃあねえ。煙草だよ。これは異人のすう巻煙草というものの吸い殻だ。おれも天狗の話を聴いた時に、ふっと胸に浮かんだのだが……。