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ほんじょみぞれがし
本所霙河岸
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《本所霙河岸(ほんじょみぞれがし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,115 字 · 24 頁
今日はそのもとの気持を訊いてみたいと思ってきたのだ、よく考えてみて、承知なれば仮の盃をする運びにしたいと思う」
「いつも御深切に、ありがとう存じます」
そう云って松枝は静かに眼をあげた。
「それからあの、唯今のお話は分部さまお独りのお考えでございましょうか、それとも横井からお願い申したことでございましょうか」
「この話をするにはべつに頼まれた訳ではないがの」
半兵衛は笑いながら膝をあげた。
「しかし横井がそのもとにしんそこうちこんでいるのは事実じゃろ、酒も飲まず悪所通いもせぬ堅物のあれが、儂の前で顔を赧くしながら、――ははははは、いやこれは口止をされていることであったよ、半兵衛も老耄の気味じゃ、ではまた折をみて参るとしよう」
「いまいっぷく、粗茶を……」
「いや公用の途中じゃ、雑作をかけたの」
「――お帰りでございますか、失礼をいたしました」
松枝は半兵衛を送りに立った。
ややしばらくして戻って来たときは、横井千之助が一緒だった。――彼は色の白い眉の秀でた美男で、澄んだ眸子には犀利な光が溢れている、着物にも袴にも凝った渋味を見せ、言葉つきにも動作にも寸分の隙が無かった。