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ウニデスちょうりゅうのかなた

橘外男ワンダーランド 幻想・伝奇小説篇

橘 外男

線上閱讀橘 外男《橘外男ワンダーランド 幻想・伝奇小説篇(ウニデスちょうりゅうのかなた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 247,361 字 · 483 頁

青空文庫

寝台の左手……部屋の奥には、四、五十人ばかりの侍女が、二列三列に並んで、六絃琴竪琴に合わせて頬に涙を伝わらせながら、緩やかなテンポで、この国の哀歌らしいものを唄い、その前にはさながらこの奏楽に合わせてでもいるかのように、二、三人ばかりの侍女が、軽羅の裾を翻して、花弁を撒いているのであります。

恍惚と父君に凭れかかるようにして、清らかな横顔、頤、頸筋をこちらに覗かせているロゼリイス姫の玲瓏さ! 白絹の垂れ幕の彼方ながら、透き徹らんばかりにたけた神々しさ! 何かは知らず、壮厳なあたりの空気に圧せられて、我々が一瞬間呆気に奪られて佇立していた時に、跪いた侍女の一人が何か囁いたのでしょうか? 両胸に垂れた白髯がかすかに揺いで、寝台上の老エフィゲニウスがあたかも瞑想からでも醒めたように、静かに眼を開きました。そして毀れものでも下へ置くかのように、抱えていた姫をそうっと床の上に横たえると、無言のまま、合唱している侍女たちの群にちょっと手を振って見せました。

悲しげな合唱はピタリと止んで、侍女二、三人がこちらに背を見せながら、花弁を撒いているばかり……何とも言おうようのない重くるしい沈黙が部屋の空気を澱ませて、唄を止めた侍女たちはこちらを眺めながらただ頬に涙を伝わらせているのであります。