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ウニデスちょうりゅうのかなた
橘外男ワンダーランド 幻想・伝奇小説篇
橘 外男
線上閱讀橘 外男《橘外男ワンダーランド 幻想・伝奇小説篇(ウニデスちょうりゅうのかなた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 247,361 字 · 483 頁
函の廻りは黒山のような人集りなのであったが、なるほどよく見れば確かにそれは木乃伊に違いなかったであろう。決して生々しい人間の屍体なぞではなかった。しかし木乃伊とさえ言えば、土気色をした瘠せて枯木のように乾干び切った埃及の木乃伊を連想する我らの木乃伊の概念を越えて、これはまたなんという美しい、絵に描いたように艶やかな男女一対の木乃伊であったろうか! ギョッとして飛び退いたも道理! まるで昨日にでも死んだかのように水々しい薔薇色の皮膚と潤いを見せて、今にも起きてムクムクと動き出すかと疑われんばかり、さながら生きた人間の眠っている姿としか思われぬ木乃伊であった。
その二体の木乃伊が今、南半球七月初旬の麗らかな朝暾を受けて微笑みつつ穏やかに美しく楽しげに、見果てぬ永遠の夢を語り合いながら接吻せんばかり相抱き合って、雨の中に眠っているのであった。
希臘か羅馬か古代埃及か? それはわからなかったが、いずれは由緒ある貴族の公達か姫君なのであったろう。屍体は鄭重に取り扱われているらしく、函の中は浮出し模様の高貴な白綸子風の絹をもって、羽根蒲団のように柔らかく全面に内貼りがしてあった。