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ウニデスちょうりゅうのかなた
橘外男ワンダーランド 幻想・伝奇小説篇
橘 外男
線上閱讀橘 外男《橘外男ワンダーランド 幻想・伝奇小説篇(ウニデスちょうりゅうのかなた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 247,361 字 · 483 頁
そう考えてくると、殿下、先程は有難うございましたと、夫人が礼を述べた時に、え? と初めは吃驚されたようであったが、
「ああ、それは結構でした、何よりです」
と、取って付けたような返事をされた殿下の態度にも、充分頷けるものがある。いずれにしても殿下が、これらの事件の首魁であり、主役であり、黒幕を務めていられることは、もはや一点の疑う余地もない。
伯爵の罪はもちろん許すべからざるものであるが、殿下の仮面に較べれば、……孤児院協会総裁として、養老協会総裁として、丁抹赤十字社総裁として、殊にオーゲの聞き込みによれば、面会日には不具者、癈疾者、孤児、寡婦ら不幸な人々十五、六人余りも寄り集って来るという。表にはそれらの人々に哀れみを施して、裏ではこれだけの陰険な悪事を企んで伯爵を嗾している殿下の方こそ、伯爵に十層倍し、二十層倍し、百層倍増した悪漢中の大悪漢であると、嬢は頬に血を上らせた。
もちろん盗品は、まだ伯爵の手許に匿してあるだろうから、まず第一に伯爵邸に踏み込まなければならぬが、その上で殿下にのっ退きならぬ証拠を突きつけて――伯爵という生き証人を突きつけて、このえせ総裁のえせ仁慈のえせ偽善者の世にも恐ろしい食わせ者の、大怪盗殿下の面皮を引っ剥がさなければならぬと嬢は憤ろしさに、身を震わせたのであった。