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ウニデスちょうりゅうのかなた
橘外男ワンダーランド 幻想・伝奇小説篇
橘 外男
線上閱讀橘 外男《橘外男ワンダーランド 幻想・伝奇小説篇(ウニデスちょうりゅうのかなた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 247,361 字 · 483 頁
と車中の徒然に、夫人は旅行鞄から出したインゲ百貨店製の上等なチョコレートを自分の口に含む。
次官の令嬢も煙草ケースを出して「どうぞ」と火を磨って差し出した。
「アブドラ十六番ですのね、いい煙草ですわ……でもこの煙草はわたしには少し強過ぎるかしら……」
やがて汽車は疾駆を終えて、喘ぎながらクーゾルの駅へ入って来た。
「奥様、ちょっと御免遊ばして……」
と令嬢が車を降りて、新鮮な空気を呼吸すべく、長いホームを往きつ戻りつ散歩している時に、旅客を装って三等車に乗っていた応援の探偵の一人が、これも往きつ戻りつホームを散歩しているのと擦れ違う。
擦れ違った拍子に、この探偵が毒蛇からでも頼まれたのであろう、唇を動かさずに腹話術みたいな声で、独語を言った。
「明朝六時半、ハンメルスフェーヘンに着く。一室準備せられたし、ネッセンゲルト・ホテルへ、ステーンセン伯爵夫人」独語だから、別段、返事をする必要はない。そのまま知らん顔して、探偵も通り過ぎれば、アイネス嬢もまた、振り向きもせず車室へ戻って、再びオールセン令嬢になり澄ましてしまう。ハンメルスフェーヘンとブレーメンとでは、およそ西と南へ、大変な違いであった。