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ウニデスちょうりゅうのかなた
橘外男ワンダーランド 幻想・伝奇小説篇
橘 外男
線上閱讀橘 外男《橘外男ワンダーランド 幻想・伝奇小説篇(ウニデスちょうりゅうのかなた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 247,361 字 · 483 頁
も、宝石貴金属類は、もはや、まったく皆無であった。ただ、それらの手も付けられぬ乱雑さの中で、階下の一号大金庫を毒蛇のラルフがこじあけた時には、一同またもや寄り集まって、飽くなき伯爵の姦悪さに驚嘆の叫びを挙げた。
「あっしの睨んだ眼に、間違えはねえや! 絶対に狂いはねえはずだ」
と自信満々で毒蛇がコジあけるに、苦心したのも道理! この大金庫の内側の壁全体は刳り抜きの空洞となって、その中から今ザラザラと零れ落ちてきたものは、夥しい白い粉の山……言わずと知れた麻薬塩酸ヘロインであった。伯爵が常習者だったのか、夫人が中毒者だったのか、それはわからぬが、この大金庫にはウルグァイ、モンテヴィデオ行きの荷札が五、六枚もついていた。
ケンペルスホーフの飛行場から、夫人の乗るはずだった飛行機がモンテヴィデオ行きのルフト・ハンザだったことと思い合わせて伯爵の逃亡予定地も、モンテヴィデオだということが断定された。いずれにしても、一オンス二千クローネもするヘロインが、この大量では宝石類の値打ちもさることながら、この麻薬の価格もまた何千万、何億クローネという莫大なものであったろう。