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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

線上閱讀下村 湖人《次郎物語(じろうものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 頁

青空文庫

給仕はお芳とお金ちゃんの役目だった。二人はめいめいに給仕盆を自分の膝のうえに立て、階段から上りたてのところにきちんと坐って、さっきからの様子を見ていたが、みんなの席が定まると、すぐ立ってお椀に汁をもりはじめた。

「みなさん、どうぞ。お米のほかはみんなうちで出来たものばかりです。分量だけは十分用意してありますから、たらふくめしあがって下さい。」

一とおり汁が行きわたると、俊亮が言った。

「いただきます。」

朝倉先生が、これまで白鳥会でおりおり会食をやった時の例にしたがって、まず箸をとった。

しばらくは誰も無言だった。そとの光はもう薄墨をぬったようになっており、一つきりの電燈がかげを作って、みんなの横顔をてらしはじめた。そのうすぐらい光の中を、汁をすする音が入りみだれて、若い人たちの食慾の旺盛さを物語った。

鶏汁、――それも、汁というよりは煮しめといった方が適当なほど、ふんだんに肉をたたきこんだ鶏汁、それをたらふく吸う機会は、彼らのうちの最も富裕なものにも、そうたびたびめぐまれるものではない。暑い盛りに熱い汁をふるまった俊亮の智恵の足りなさを、彼らのうちに万一にも笑ったものがあったとすれば、それはおそらく、その生徒が、慢性の胃腸病にでも取りつかれていて、とうに若さを失った証拠でしかなかったであろう。